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ペンギン「皆殺しの日ぃー!」

西加奈子「漁港の肉子ちゃん」を読みました。熱が冷めないうちの2冊目です。

舞台は北陸のとある港町。知らない人は遠くても知り合いの知り合いというくらいあらゆる意味でせまい町。そんな町の焼肉屋「うをがし」で働くまるまるとした肉子ちゃんとその娘・キクりんのお話。

肉子ちゃんはいわゆるだめんず好き。港町に辿りつくまでの人生は幸せとは言えないんだけど、とにかく底抜けに明るくて人懐っこくて少し足りないんじゃないかと思うほどの能天気さで乗り切ってきた不屈の38歳。
キクりんは肉子ちゃんとはルックスも性格も何もかもが正反対でなんとなく世の中を冷めた目で見ている11歳。

二人が生活する町は閉塞感がすごいんだけど、こんなところで生活している人をなんとなくうらやましいと思ってしまいました。まあそう思う理由も「観光で来たからそう思うだけ」と作中にズバリ書かれているのですが。ああでもやっぱり警備員ばりに館内をウロウロしてるペンギンがいる閑散とした水族館にいつでも行ける環境なんて羨ましいじゃない。

私はいわゆる才能のある無気力系主人公がいけすかないんですけど、キクりんもわりとそんな感じで、女子小学生にとって「かわいい」というのはある意味才能だし。母親が母親だから年齢のわりには男女のあれこれもなんとなくわかってるし、コーヒーとタバコが好きな鍵屋のカッコイイ女店主に憧れたり、オシャレ雑誌の撮影で町に訪れた雰囲気のあるカメラマンにひと目惚れしたり、クラスの女子を「子どもっぽい」と見下すような節があります。
そんなキクりんが本性を見せたのがクラスの女子同士のいざこざ。よくある話で「あの子嫌じゃない?私たちのグループに入らない?」という感じの。いろいろあってキクりんと一番の仲良しだったマリアちゃんが孤立してしまうのですが、キクりんは「みんなもうマリアちゃんのこと許してあげてもいいのに…でもそんな雰囲気じゃないし…」と理由を付けて避け続けます。夏休みのある日、キクりんは校外でよく会う別のクラスの二宮という男子にマリアちゃんのことをなんとなくこぼすんですね。キクりん「マリアちゃんっているじゃん」二宮「ああ、あいつかわいいよな」キクりん「はあ?どこが?」ここから怒涛のマリアちゃんの悪口オンパレード。顔かわいくないくせにかわいい服着たって全然似合ってないだのなんだの。陰口の輪には入りたくない、実際に攻撃されることがあっても「攻撃するより攻撃される方がマシ」という考えを貫いていたキクりんが大爆発。この反応に、うわーキクりんちゃんと自分がかわいいって自意識もあるしマリアちゃんのことかわいくないって思ってんじゃーん自慢にもちゃんと嫉妬してんじゃーんって、思いっきり子どもっぽい面を見せたキクりんが急に愛らしく思えてしまいました。この会話がきっかけでキクりんは「マリアちゃんを一番許したくなかったのは自分」ということに気付いてマリアちゃんと仲直りするんですけどね。マリアちゃんがやったことは本当に自分勝手でひどいことなんたけど、それでも「キクりんはマリアちゃんと仲直りして欲しい」とずっと思ってた私もたいがいトシだな!

もうひとりの主人公の肉子ちゃん、彼女の明るさと人懐っこさと能天気さは本当にうらやましい。爪の垢を煎じて飲みたい。とくに「何度も聞いた話でも初めて聞いたかのように新鮮に驚く」能力がうらやましすぎる。会ったこともない人のお葬式でわんわん泣く理由が「人が死ねば悲しいから」こんな単純な優しさが欲しい。人の言うことを100%信じるせいで辛い思いもいっぱいしてきただろうけど、自分が人を傷つける立場にはならないんだからそれでいいじゃん?

終盤はキクりんの出生の秘密が明かされます。私は頭っから「赤の他人がひとつ屋根の下で暮らしている」と思って読んでいたので、肉子ちゃんがキクりんが寝静まったのを見計らってコソコソ電話していた相手はキクりんの産みの親なんだろうなと思ってたし、そもそもキクりんが肉子ちゃんを「肉子ちゃん」って呼んでるのが母娘関係に思えなかったし、なによりもいくら字が違うからって母と子で同じ名前は考えられない。だから「実は肉子ちゃんとキクりんは本当の親子じゃなかったのです!」という書き方に、ていうか実の親子だと思って読んでた人なんているのか?と思ったのですが、キクりんは「4歳の頃から気付いてた」そうで、別に「私わかってたもんねー!」ととくいになるようなことではなかったようです。

出生が明らかになり、肉子ちゃんに産みの親が新しく家庭を築いたことを伝えられ「キクりんが一緒に住みたいって言えば喜ぶと思う」と言われても、迷うことなく肉子ちゃんとの貧乏な生活を選んだキクりんがあらためて肉子ちゃんに「大好き」と自分の思いを伝えるシーンには泣きました。これからも一緒の二人にほっとした反面、二人の関係にはたとえ生活が別々になっても絶対に心はつながったままなんだろうなと思わされるたのもしさを感じました。

この物語の舞台は「北陸の港町」なのですが、モデルとなったのは宮城県石巻市とのこと。もっとずっと寂びれた町をイメージしていたので意外でした。

最後に、発見!プロレスネタ。※作者はプロレスファンなのでこじつけではありません。
まず肉子ちゃんが働く焼肉屋「うをがし」の経営者・サッサンの本名が「サスケ」。あえで片仮名なのはズバリ東北の英雄からでしょう!
もうひとつ、近所のおじさんの妹の子どもの名前が「乃亜(のあ)」。「うちの旦那がプロレスファンでプロレス団体から取った」だそうで。
他にも金本さんという人が出てきたりするんですけど、わかりやすかったのはこのくらいです。

次はどれを読もうかな~。
読書 | CM(0) | TB(-) 2014.07.24(Thu) 00:04

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