望ましき生は、一日の虎。羊としての千年にあらず。
ジェニファー・ジョーダン「K2非情の頂-5人の女性サミッターの生と死-」を読みました。
エベレストに次ぐ世界第2位の高峰でありながらエベレストに比べて登頂者数は少なく死亡率ははるかに高いというK2に登頂した5人の女性登山家にスポットを当てたノンフィクション。
山男って明朗快活なイメージがあったんですけど、最初の30ページくらいでガラガラと崩れました。
男社会である登山界にとって女性はあらゆる意味で疎ましいものであると。体力的な問題で男性と同じ働きができないのでその分男性がカバーしなければならない。そのくせ実力以上のことをしようとして、それはそれで迷惑。性欲の対象ともなるためしばしばいさかいが起こる。そんな女性に対して、下心を持って近付き、相応の見返りがないとわかるや嫌がらせに出る者も。
ある女性登山家が登山隊に参加した時のエピソード。その女性は決して甘えることなく男性以上の働きをしているにもかかわらず、登山隊に女性を入れることをよく思っていなかった男性メンバーから嫌がらせを受ける。テント設営後、男性メンバーに「ここにテントを張ってはだめだ。移動しろ」と言われる。他の場所に張ると「ここもだめた。移動しろ」そんなことを繰り返しているうちに他の登山隊のテントで埋まってしまいテントを張る場所がなくなってしまう。結局女性は野宿する破目に。
ただでさえ疎ましい女性が更に成功しているとなると今度は嫉妬の対象になる。女性というだけでスポンサーが付きやすく、まわりに持ち上げられて実力に見合わない挑戦ができてしまうということも嫉妬の原因に。酷いケースになると登頂したことすら証拠がないと言い出して認めようとしない。
山男ってこんなに陰湿なんだ…と思ってしまいました。島崎三歩は幻想か!
この本に登場する5人は、ひとくちに女性登山家といっても登山に対する姿勢がまったく違う。
・ワンダは女性登山家のパイオニア。初めてK2に登頂した女性であり、男性すらもおそれるほど、エネルギッシュで意欲的。
・リリエンヌは夫と行動を共にするカップル登山家。「夫の行きたいところが私の行きたいところ」と夫に寄り添う。
・ジュリーは家庭を築いた後に人生のパートナーとは別に登山のパートナーを得て山岳映画の撮影部隊として山に登る。
・シャンタルは「ぬいぐるみと詩集しか入っていない」と揶揄される小さなザックを背負い、女性であることを武器にして男性を利用し、自分が登ること以外のことはなにもしない。
・アリスンは酸素ボンベも誰かが張った固定ロープも重い荷揚げしてくれるポーターも使わずに己の体ひとつで山を登ることに価値を見出す。
山なんて登頂して無事に下りて来りゃいいんでしょ?と思っていたけどとんでもない話でした。とくにシャンタルとアリスンの比較がわかりやすいかと。
5人のうち、3人は下山中に死亡、残る2人も数年の後に別の8000メートル峰で死亡。
8000メートルを超えると、頭は痛いわ目はよく見えないわ血は文字通りドロドロになるわで、1日の休養が命取りになるといわれる、そもそも人間が生きていけない過酷な環境。骨が折れてもまともな応急処置もできず、そのまま降りなければならない。
なんでそこまでして山に登りたがるのか。
理由のひとつに「記録が欲しい」というものが確実にありそうです。実際にワンダは後続の女性登山家に「女性初」の称号を取られることをおそれていたし、山に登ることに純粋に喜びを感じていたアリスンも、自分と正反対のタイプの女性登山家をライバル視し、いつしか記録を追い求めるようになってしまった。
それから登るのに莫大なお金がかかるということがスポンサーを得るために記録を追い求めざるをえない原因になっているのかも。
いろいろな理由はあれど根本は「そこに山があるから」なんでしょうね。
遺族がみんな諦観しきっているのが悲しい。口を揃えて「本望だった」と言うのが悲しい。
エベレストに次ぐ世界第2位の高峰でありながらエベレストに比べて登頂者数は少なく死亡率ははるかに高いというK2に登頂した5人の女性登山家にスポットを当てたノンフィクション。
山男って明朗快活なイメージがあったんですけど、最初の30ページくらいでガラガラと崩れました。
男社会である登山界にとって女性はあらゆる意味で疎ましいものであると。体力的な問題で男性と同じ働きができないのでその分男性がカバーしなければならない。そのくせ実力以上のことをしようとして、それはそれで迷惑。性欲の対象ともなるためしばしばいさかいが起こる。そんな女性に対して、下心を持って近付き、相応の見返りがないとわかるや嫌がらせに出る者も。
ある女性登山家が登山隊に参加した時のエピソード。その女性は決して甘えることなく男性以上の働きをしているにもかかわらず、登山隊に女性を入れることをよく思っていなかった男性メンバーから嫌がらせを受ける。テント設営後、男性メンバーに「ここにテントを張ってはだめだ。移動しろ」と言われる。他の場所に張ると「ここもだめた。移動しろ」そんなことを繰り返しているうちに他の登山隊のテントで埋まってしまいテントを張る場所がなくなってしまう。結局女性は野宿する破目に。
ただでさえ疎ましい女性が更に成功しているとなると今度は嫉妬の対象になる。女性というだけでスポンサーが付きやすく、まわりに持ち上げられて実力に見合わない挑戦ができてしまうということも嫉妬の原因に。酷いケースになると登頂したことすら証拠がないと言い出して認めようとしない。
山男ってこんなに陰湿なんだ…と思ってしまいました。島崎三歩は幻想か!
この本に登場する5人は、ひとくちに女性登山家といっても登山に対する姿勢がまったく違う。
・ワンダは女性登山家のパイオニア。初めてK2に登頂した女性であり、男性すらもおそれるほど、エネルギッシュで意欲的。
・リリエンヌは夫と行動を共にするカップル登山家。「夫の行きたいところが私の行きたいところ」と夫に寄り添う。
・ジュリーは家庭を築いた後に人生のパートナーとは別に登山のパートナーを得て山岳映画の撮影部隊として山に登る。
・シャンタルは「ぬいぐるみと詩集しか入っていない」と揶揄される小さなザックを背負い、女性であることを武器にして男性を利用し、自分が登ること以外のことはなにもしない。
・アリスンは酸素ボンベも誰かが張った固定ロープも重い荷揚げしてくれるポーターも使わずに己の体ひとつで山を登ることに価値を見出す。
山なんて登頂して無事に下りて来りゃいいんでしょ?と思っていたけどとんでもない話でした。とくにシャンタルとアリスンの比較がわかりやすいかと。
5人のうち、3人は下山中に死亡、残る2人も数年の後に別の8000メートル峰で死亡。
8000メートルを超えると、頭は痛いわ目はよく見えないわ血は文字通りドロドロになるわで、1日の休養が命取りになるといわれる、そもそも人間が生きていけない過酷な環境。骨が折れてもまともな応急処置もできず、そのまま降りなければならない。
なんでそこまでして山に登りたがるのか。
理由のひとつに「記録が欲しい」というものが確実にありそうです。実際にワンダは後続の女性登山家に「女性初」の称号を取られることをおそれていたし、山に登ることに純粋に喜びを感じていたアリスンも、自分と正反対のタイプの女性登山家をライバル視し、いつしか記録を追い求めるようになってしまった。
それから登るのに莫大なお金がかかるということがスポンサーを得るために記録を追い求めざるをえない原因になっているのかも。
いろいろな理由はあれど根本は「そこに山があるから」なんでしょうね。
遺族がみんな諦観しきっているのが悲しい。口を揃えて「本望だった」と言うのが悲しい。