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男闘呼組(一発変換)

米原弘樹「ハイスクール歌劇団 男組」

男子高校生徒が推薦入試のための作文のネタ作りに男だけの歌劇団を結成し文化祭に向けて奮闘する話。
実在する東海高校カヅラカタ歌劇団をモデルにしたスペシャルドラマのノベライズのようで、スペシャルドラマは見てないけど、過不足なくノベライズしたんだろうなという印象。ノベライズってのは尺の都合や映倫の関係で表現できなかった部分が補われるのが魅力なのに、そう思えるところがひとつもない。
歌劇団の主要メンバーは7人いて、平凡な主人公、親友1、親友2(宝塚ファン)、イケメン、オタク、ヤンキー、秀才と、一応のキャラ付けはしてあってそれぞれなんとなくそういう感じで登場するけど、以降は誰がどのセリフをしゃべってるのかわからないほど無個性。途中でメンバーがどっと増えても名前すら出てこないあからさまなラインダンス要員。
小説ならば最初っから15人にして各メンバーのエピソードをちゃんと書くべきと思うけど、完全ノベライズとなると、まあ、尺やギャラの問題もあるしね…と思ってしまって、こんなもんかなと。
ドラマならいろんなタイプのカワイイ男子高校生がわちゃわちゃしてるのをほのぼの眺めるという楽しみ方ができそうだけど、ストーリー自体は題材が変わってるだけで部活漫画で見たことのあるエピソードのオンパレードだし、小説で読むようなもんでもないなと思いました。

それから「宝塚」と実名で書かれている以上、いやそれ違うだろという部分もありまして。

劇場の前で生徒の名前を書いたプラカードを持っている人はファンクラブの勧誘をしている。
→ファンクラブを介して購入したチケットの受け渡し業務を行っている。ファンクラブについて問われれば案内するが勧誘はしない。

レビューが始まるまでの30分間の休憩
→2012年月組の「ロミオとジュリエット」と思われるが、一本物の場合、休憩が入るのは芝居の途中。レビューは芝居が終わってすぐに始まる。

女役によるラインダンス
→娘役に限らない。男役も含めて下級生が務める。んだけど、「女役」を「女の格好をした」という意味ならばツッコむほどのことでもないか。

一度もトップに立つこともなく
→トップは何度も立てるものではない。基本的に一度立ったら降格もないし再就任もない。トップなったらあとはやめるだけ。横綱と一緒。

他にも、かけ声は「ヤー!」じゃなくて「ヤッ!」だよね、とか、どうでもいいのも含めてチラホラあるけど、宝塚ファンにチェックしてもらわなかったのかしら?

ところでこの本、カバーデザインした人の名前が「児玉明子」。かつて宝塚に所属していた演出家と同姓同名同字。なんたる偶然。
読書 | CM(0) | TB(-) 2016.10.14(Fri) 20:41

21週と6日まで

大石圭「殺人勤務医」

ダークヒーローかと思ったら、被害者の悪事が
・児童虐待
・飼育放棄
・鯉の住む池に洗剤を流した
・アイドリング+車外ポイ捨てゴミ放置
・中華料理店で大量に注文しておきながらほとんど手を付けずに残した
こんなかんじで、最初のふたつみっつはともかく、最後のふたつはそんな苦しめて殺すような程の事でも…と思ってしまってモヤモヤ。
家族がいようと子どもだろうとお構いなしで、結局、主人公本人が語る通りダークヒーローじゃなくてただの快楽殺人鬼だってことなんですね。主人公が「ナチュラルボーンキラー」である理由には唸った。
最初のエピソードが中華料理店だったから、たとえば児童虐待→飼育放棄→…→中華料理店の順だったらまた印象違ってただろうな。「期待通りのダークヒーローだ!」→「えっ、そんなことで殺すの?」みたいに。

主人公は中絶専門病棟の勤務医で、一緒に働いている人全員が「先生ステキ(はあと)」って感じなんだけど、アメリカ人だって朝からそんなに食わんだろう、夜だってどんだけ食うんだよってくらい大食漢、ワイン好きだからワインに合うようないかにも太りそうな食事ばっかりだし、車通勤でスポーツに打ち込んでる様子もないし、あんな食事してたらどう想像してもステキな見た目にはならない…。ただ、穏やかで人当りは好いので、清潔感あふれるデブを想像して読みました。
このテの小説にありがちな完璧超人系主人公はいけすかないけど、襲うときはスタンガン使ったり、逆に暴漢に襲われたときは手負いの体で暴漢をねじふせたりなんてことはなく助けを呼んだりと腕っぷしが強いわけではないので、そこらへんは親しみが持てて好印象。
この世に生を受けることができなかった子どもには「かわいそう」と思わずに「運がなかったな」と思う一方で、妊婦には中絶を考え直すことができるようにアドバイスし、結果、出産を選んだ妊婦がその後順調に育っているお腹をさする姿を見て安堵したりと、ホントに不思議な人。
31歳の主人公の彼女が50歳の院長ってのには驚いたけど、愛してくれなかった母の面影を求めていたのかな。エピローグからするに主人公は院長との新しい生活を選ばずに母親と暮らす…というか母親を飼っていくように思えたし。
不遇な生い立ちへの同情もあるけど、いけすかなくない殺人鬼主人公はめずらしい。

中絶の歴史も勉強になった。「中絶は不可。ただし」で中絶が気軽に行われているのは「経済的理由」の拡大解釈だったのか…。
読書 | CM(0) | TB(-) 2016.10.06(Thu) 23:06

スイキュー!!

篠田節子「家鳴り」

それはそれは面白かった「仮想儀礼」の作者のホラー短編集。

・幻の穀物危機
震災で東京が壊滅、食糧を求めて農村に避難民が大挙して押し寄せてくるというエピソード、西森博之原作の「何もないけど空は青い」にも似たようなエピソードがあるけど、こっちのほうがもっとずっと残酷。
「作るもの」と「作れないもの」に二分するなら私も主人公と同じく「作れないもの」だから気が滅入る。

・やどかり
まともな男ならば劣情をもよおすはずもない普通の女子中学生の描写が生々しくて気持ち悪い。
どっちに転んでも最悪じゃんと思ってたので、あの結末は最良かと。
男が勝手に「女」だと思いこんでいた女子中学生はまだまだ「少女」だったってことですね。

・操作手
介護SF!あたらしい!
これの嫌なところはおばあちゃんは悪くないってところ。思うところはあっても、嫁いびりしてたわけでもないし、孫もかわいがっていたし、息子に愛情が偏るのは当然のことだし。嫁が姑の介護を8年も続けているのがなによりの証拠かと。
すごい死に方だけど、おばあちゃんの人生を思うと幸せに死んでいったと思いたい。

・春の便り
憑かれてるような気もするんだけど、おばあちゃんと愛犬の霊(?)の心温まるやりとりのせいで絵本にもできそうなほのぼのファンタジーに。
いろいろな点で「操作手」と対象になってるんだな。似たような話を続けたのは対比を際立たせるためかな?
家族に介護されて家で迎える壮絶な最期と、家族に見放されて病院で迎える穏やかな最期、どっちがいいんだろう?

・家鳴り
失業した夫が趣味のクラフトでいつの間にか自分の4倍も稼ぐようになった妻に「食べさせること」を生きがいとして見つけた結果、妻がブクブク太っていくんだけど、二人は幸せになっていく一方でいろんなことが壊れていって、この徐々に取り返しのつかないことになっていく様子がゾクゾクする。

・水球
この話を怖いと思えるには私は人生経験が足りない。
ところでなんでこんな、よくある話を書いたんだろう?最後になにかものすごいことが起こるかと思ったらなにごともなく終わってしまって本当にただの「よくある話」。
でもこの「じわじわ感」は作者特有のものなんだろうな。

・青らむ空のうつろのなかに
被虐待児が預けられた先がカルト村って良い方向に転がるわけがない。
被虐待児がどうにもならなすぎて悪役にもなりそうな施設の職員がかわいそうになってくる。
考えてみたらこの本、この話も含めて7作中4作が心中モノなんですよね。ラストは豚と真珠ならぬ豚と心中。
読書 | CM(0) | TB(-) 2016.09.02(Fri) 21:21

C!=K

アゴタ・クリストフ「第三の嘘」を読みました。

三部作の完結編。前作は最後にクラウスが登場して謎が深まったたところで終わりましたが、真相やいかに?!
という感じで読み始めたのにまさか完結編にして「なにこれ意味わかんない」と思うことになるとは。時系列はめちゃくちゃだし、死んだはずの人が生きてるし、同じ名前の違う人が出てくるしで頭の中ハテナだらけ。ネットに上ってる感想読んで「そういうことだったのね…?」と思えたような思えないような…。かろうじて理解できたのが「妄想オチ」ってなんじゃそりゃー。
あと2回くらい読めばもうちょっと自分なりに理解できるような気がしないでもないけどもうそんな気力ありません…。

あとがきに掲載されていた各媒体での作者インタビューの抜粋はかなり興味深かったです。「ぼくら」には作者自身と兄を投影していたとか、悪童日記で描かれた「訓練」は実際にやっていたことだとか。戦時下ってすごい世界…。戦争を知らずに済んでいる自分は本当に幸運。
読書 | CM(0) | TB(-) 2015.04.02(Thu) 23:35

アナグラム

アゴタ・クリストフ「ふたりの証拠」を読みました。

「悪童日記」の続編ということで、「この後どうなっちゃうの?」という終わり方をした最後のシーンの続きから始まりました。ここに答えがあったとは。
今作の主人公はおばあちゃんの家に戻ったリュカの方。「ぼくら」はふたり一緒だから変人なんじゃなくてリュカひとりでもじゅうぶんに変人でした。母子心中しようとした女性とその息子マティアスを助けて一緒に住み始めたのにパートナーを失くした女性の家に夜な夜な通ったり。彼は年上好きですね。年下にはアプローチされてもなびかん。
わからないのがリュカがマティアスがすべてというくらいマティアスに執着したこと。マティアスの母を消したのはいつかマティアスを連れて自分の前からいなくなってしまうことをおそれてだろうし。リュカは献身的なんだけど、それって人のために動くことを何とも思わない、「何とも思わない」ってのは苦に思わないという意味じゃなくて、文字通り何とも思わないんじゃないかって。感情が無いというか。実際、これまでも数々の人の死に直面してきても感情を見せなかったし。だからマティアスの死から立ち直れなかったのがすごく意外に思いました。
しかし…あそこまで不幸な身の上のマティアスが死んでしまったのは傍から見ててもやりきれない。きっかけがリュカと並んで絵になる美しい子どもを見たからなんていう…。死ななくてもいいじゃんとは思うけど、わからないでもないのがなんともかんとも。リュカはマティアスのことをじゅうぶんに慈しんでいたと思うのに、それが届いてなかったんだろうか。でもマティアスも美しい子どもがリュカと接することに激しく嫉妬してたから、ちゃんとマティアスの気持ちもリュカにあったと思うんだけどね。だから死んでしまったのか。ああ…。
本筋とはあまり関係ないけど、本屋のヴィクトールと姉の話も怖かった。知らぬうちかけていたプレッシャー、勝手に感じていたプレッシャー、それに圧し潰されたヴィクトール。本当に二人とも救われない。
最後の方でようやっと「ぼくら」の片割れで国境を渡ったクラウスが登場。前作読んだときは少しも思わなかったけど、「ぼくら」ははたして本当に「ぼく"ら"」なんだろうか?という疑惑が浮上。
というわけで次は三部作完結篇の「第三の嘘」を読みます。
読書 | CM(0) | TB(-) 2015.03.19(Thu) 23:48
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